きものやまと
春夏LOOK‐スタイリスト&カメラマンに聞く、撮影の裏側‐

梅雨明けはもうすぐそこ。一雨ごとに夏に近づいています。
4月から展開が始まったきものやまとの春夏商品、LOOKビジュアルと共にご好評いただいております。

今回は、2021年の春夏から連続してルック撮影に参加いただいている、スタイリストの安野ともこさん、写真家の伊島薫さんを迎え、<きものやまと>商品デザイナーの楢村、アートディレクターの杉田とともに春夏LOOKのスタイリングポイントや撮影秘話を伺いました。

――きものやまと今シーズンテーマは「お天気雨」です。
このテーマを最初に聞いたときの感想を教えてください。

安野すごくいいな! と思いました。「雨の向こうに必ず晴れがある」ということが今の世の中を表しているし、軽やかなきものの素材感ともすごくマッチしてすてきだなって。
伊島正直、撮影のことを考えると、とにかく晴れてくれないと困るなって思いました(笑)。人工的に雨を降らすことはできても、太陽を出すことはできないから……。
杉田そうなんですよね。最初にイメージソースをいろいろ見ていただいたんですけど、「全部できるよ」って心強いお言葉をいただいた後、「だけど、天気次第だね」って(笑)
楢村リリースまでのリミットが迫った中での撮影スケジュールだったので、万が一雨でリスケになったらどうしよう……とドキドキしていました。
安野みんな祈る気持ちでしたよね。
楢村はい、絶対降らせない! って。見事、晴れになりました(笑)。

――お二人とのタッグはこれで3シーズン目ですね。ブランドイメージを共に育てていただいているように思います。モデルさんのふり幅が広い印象がありますが、起用の理由があれば教えてください。

安野きものやまとさんは、とても幅広い年代のお客様から支持されているとのことなのでその多様性を感じていただきたくて、年代の違うお三方を起用させていただきました。
楢村モデルさんについては、様々案を出していただいて共にイメージを固めていったように思います。
安野そう、これまでの仕事の中でご縁をいただいた方たちできものやまとのイメージにマッチする方を。今回は、昨シーズンお願いしていたモデルのお二人がスケジュールNGで。新たにイメージに合う方を探しました。
続投していただいている伊里さんはもう、ブランドイメージぴったりで。メインビジュアルの世界観がとてもマッチしましたね。翔子ちゃん(田村翔子様)は、モデルを新たに探さなきゃいけなくなった時、急に私が「あれ、翔子ちゃんは!?」ってなってそれで連絡させてもらったんです。今は起業されて社長でもいらっしゃるから、モデルの仕事はどうなのかな~と思ったんですけど、ご本人もノリノリで息抜きになって楽しかった、って言ってくださって。
楢村美絽さんは安野さんがインスタで見つけていただいたんですよね。
伊島モデル選びに苦戦していた時に、安野がインスタで美絽さんを見つけて「この人はどう?」って。それで調べたら僕の知っているモデルクラブの子だったので社長に電話して聞いてみたのね。そしたら「あの子13歳だけど大丈夫?」って言われて、若くてびっくりしたよね(笑)。
でも実年齢がどうとか関係なく、とても魅力的だから大丈夫だよ、ってお願いしたんだよね。
安野それでいざ撮影が始まってみたら全然物怖じしなくて。自然な表情で撮影ができていましたよね。
今彼女が持っているものが、今のきものやまとブランドの雰囲気にピッタリはまったなと思います。

――スタイリングもとても素敵でした。こだわりのポイントなどはありますか?



安野ないない!私スタイリングする時何も考えてなくて(笑)。私が「これにはこれ!」って提案するとみんな「えー! 素敵!」って言ってくれるから、私もノリに乗っちゃって。どんどん楽しくなってやらせていただいています。洋服の時も、なんとなくいいんじゃないかな、っていう感じでやらせてもらっています。勿論、好き嫌いもあると思うんですが。きものやまとさんとは同じ感性で取り組めているので、それがみなさまに伝わればいいな、と思っています。

――「安野さんらしさ」と「きものやまとらしさ」がマッチした結果なのでしょうか。


安野というより「きものやまとらしさ」はものづくりチームから常にインスパイアされています。みなさまの人柄や明るさ、温かさがすべてきものやまとの商品に集約されている気がします。そこから考えるから、自ずといい感じになっていると思うんですよね。多分みなさまがもっと適当な方々だったら私もあまりいい仕事ができていなかったかも……(笑)。
楢村嬉しいです。私たちも安野さんのコーディネートを拝見しながら毎回新たな発見と刺激をもらっています。カラーonカラーを品よくコーディネートしていただけたり、自分だと考えつかなかった組み合わせをご提案いただいたり。でもうまくまとまっちゃうんですよね。

――ビジュアル撮影についてお聞かせください


安野この水滴の感じや光の反射、プリズムが本当にお見事。スタジオには屋上やバルコニーもあるのですが、それぞれにニュアンスのある良い写真が撮れましたね。
杉田どの場所でどのタイミングで撮影するかは伊島さんと相談しながら決めたんですが、日の傾きの計算を伊島さんがしてくださって、すごく安心感がありました。

――チーム感が伝わってきます。昨年の春夏からどんどん進化されているような……。


安野お洋服のときはガッツリ衣裳コーディネートに入るんですけど、きものは着付け師さんに入っていただけるから、客観的に見ることができて新鮮です。
まさか社長の矢嶋さんからスタイリングをお願いしていただけると思っていなかったので、私にできることがあるのなら、というような話をさせていただきました。こうしてビジュアル撮影に携わらせていただけるなんて、本当に楽しくて仕方ないです。ありがとうございます。
楢村このチームは、モデルさんヘアメイクさん含め安野さんにつくっていただいたんです。最高のチームをありがとうございます!
安野こんなにきものが愛しいと思えるなんて、お受けして良かったなと思っています。

――メインビジュアルでは、そんなスタッフ総出でつくり上げたと伺いました。



杉田屋上で撮影したのですが、屋上についている梯子の上からシャワーで雨を降らせていただきました。
安野シャワーってやってもなかなかここまで綺麗に水玉が写って表現できることってないじゃないですか。とても奇跡的な一枚だと思います。
伊島もう写真はね、数打てば当たるんです(笑)。
杉田いやいや!そんなことないです!伊島さんが切り取る一瞬が本当に素敵で。思い描くイメージをビジュアライズできるかなって不安に思いながらリクエストしたんですが、伊島さんが「大丈夫」って。
伊島プリズム感を出すためにいろいろ小道具を用意しました。撮った写真は何枚かビジュアルで採用していただいています。
楢村濡れながら撮影する伊島さんの脇で、安野さんはじめヘアメイクさん、着付師さん全員で一致団結したからこそできたビジュアルでしたね。

――お話を伺っていても、現場の楽しい雰囲気が伝わってきます。


安野常ににぎやかですよね。誰もしゃべってない時がないくらい(笑)。
伊島きものって聞くとやっぱり堅いイメージがあって、きものの撮影となるとあまり突飛なことはできないから、きものの仕事と聞くとあまり気乗りしないことが多いんですけど、きものやまとの場合は安野のスタイリングということもあってコーディネートから参加させてもらったのがよかったですね。
安野伊島と事前に話していた時に、面白いこといっぱい言っていたから私も刺激になって。なんか、感覚が面白いなって思ったんです。だからコーディネートの場に来てもらいました。
伊島じつは僕、これまでにああいうコーディネートの場に立ち会ったことがなくて。大抵はスタイリングが出来上がっているものを撮ることが多かったから。
安野それこそ3パターンに絞った中で、どれがいいですか、って選んでもらうことはあったと思うんですけど。1からっていうのはなかったよね。
伊島そう。僕自身はきものの知識が全くない中で好きに言っていただけなんだけどね。だからコーディネートに初めて立ち会って、「あ、なるほどね。このきものには帯はどうする、小物はどうするってこういう感覚か。それならこっちの帯の組み合わせも面白そうじゃない?」っていう感じできものって「組み合わせの妙なんだな」っていうことに初めて気づいたんです。
安野それが新鮮だったの!
伊島それもあって、きものの撮影が少し楽しくなりました(笑)。とても楽しんで撮らせていただいています。


――つくりこみすぎない、というのもポイントだとか



安野そうなんです。みんな技をもってすればできてしまうから、ヘアメイクも色々やりたくなってしまうのがきものの撮影だと思うんですけど……そこもいいバランスでしたね。YOBOONさん(ヘアメイクアーティスト)に任せて正解でした。
杉田頑張りすぎないってすごく大切ですよね。
安野私たちがある程度仕事をやってきて歳を重ねているからこそ、そういう風にできる年齢になったのかも。頑張りすぎずに、力を抜いていられるから。だからスタイリングにも反映されているのかもしれないですね。
楢村そこは私たちが目指すことにも深く通じていていますね。“きものを肩ひじ張らずに楽しんでほしい”という想いを体現していただいたヘアメイク、スタイリングだったと思います。
安野奇をてらったりせず、正統派に見えてすっと入っていける親しみやすさで、っていう風にできたのは、きものやまとさんの素材感や一つ一つの善さが現れているなと思います。今日着させてもらったゆかたもすごく着心地がいいですもん。ずっと着ていられるな、って。
楢村ありがとうございます。今回のビジュアルを通して、私も着てみようって思っていただける方が増えてくれると嬉しいですね。





(左)伊島薫(@izimakaoru

京都市生まれ。
レコードジャケットを中心にした音楽シーン、ファッション雑誌や広告写真の分野で活動しながら1982年カセットマガジン『TRA』、1994年ファッション雑誌『zyappu』を発刊。
1999年『死体のある20の風景』を発表。
その後も写真だけにかぎらず映像作品も手がけ、昨年からミックス・ルーツやミックス・カルチャーを持つ人たちへのインタビュー・メディア“Mikkusu Magazin”を主宰。

(右)安野ともこ(@yasunotomoko

埼玉県生まれ。
スタイリスト、衣裳デザイナー、ジュエリーデザイナー。
スタイリスト事務所CORAZON、ジュエリーブランドCASUCA主宰。
小泉今日子さんの写真集の仕事からスタイリストのキャリアをスタート。
映画や舞台、TVドラマやCM等のスタイリング、ミュージカルや舞台、CMの衣裳デザインほか、フィギュアスケート浅田真央さんのソチオリンピック他のコスチュームも手がけ、デザイン・製作と幅広く活躍中。