「カンボジアでのものづくり現地取材記」

 やまとの絞りゆかたには、「絵付け」と「くくり」の工程をカンボジアで行っているものがあります。
くくりは、絞りの模様を作る上で、最も大切な部分。一粒一粒、布にヒダを寄せて糸で括る作業は、とてつもなく手間と時間がかかる為、国内での後継者育成は難しく、有松のさんちでは、数十年前から海外での生産の可能性の模索をはじめました。

「絞りを後世へ残したい」の想いで、長い年月をかけてカンボジアの人たちへ技術を伝えてきてくれたおかげで、私たちは素晴らしい技術の絞りゆかたをお届けできています。

● 絞りゆかたとは

布を絞って(くくって)染める絞り技法により生まれる独特な文様には、手仕事ならではの繊細さと美しさがあります。絞りゆかたの軽くて涼しい着心地は唯一無二のものとして、長く人々に愛されてきました。

● なぜカンボジア

日本ではくくりの後継者がしだいに少なくなっており、有松鳴海絞りの技術を廃れさせないよう、日本の職人たちがカンボジアへ行き、その技術を伝授しています。
高品質の絞りのゆかたを、沢山の方に手に取っていただきやすいよう、さんちとコミュニケーションをとりながら海を超えてものづくりをしています。

● カンボジアの歴史

アンコールワットで知られるクメール王朝は東南アジアにおける交易の中心地として栄え、強力な王朝の一つでした。王朝の衰退後、フランスの植民地支配があり、文化や教育に大きな影響をうけ、第二次世界大戦後に独立を迎えました。
1975 年にポルポト政権によって極端な差別や迫害を受け恐怖と暴力の支配下に置かれました。ポルポト政権崩壊後、カンボジアは平和と繁栄のために動いており、その歴史には栄光と苦難を乗り越えた軌跡があります。

● カンボジアの風土/気候

日本からおよそ4000km 離れているカンボジア。
1 年を通して30 度を超える暑さで日本の夏のような気候が続きます。四季の変化はなく、季節は雨季と乾季に分けられます。

● カンボジアの手仕事

くくり加工は農閑期に家でできる仕事として主に女性が携わっています。村の住まいは高床式住居がほとんど。電気代がかからず、自分の手と支給の道具(ウデガネとコロ) だけで仕事ができるので、初期投資なしで始められる点が安心感につながっています。
ハンモックに揺られながら、子供をあやしながら、母娘で…とみなさんさまざまなスタイルで仕事をしています。

愛知県・知多半島で織られた白生地を工場の人から受け取ります。細かな指示が書かれた絞りの設計書が配られ、完成品は入念にチェックされます。指示通りでない場合や生地を汚してしまった場合は続けて仕事ができないなど厳しい基準でくくり加工をしています。

<Special Movie>

● ゆかたの白生地を追ってカンボジアへ。
絞りの最初の手仕事をしてくれている
人たちに会いに行きます。

[インタビュー] 奥澤恵さん

[インタビュー] 奥澤恵さん

「絞りを後世へ残したい」の想いで、長い年月をかけてカンボジアでの生産環境を整え、 今では280名ほどの方が絞りの仕事に従事しています。
「ワーカーたちの生活の質が上がったかなと感じるのが嬉しいですね」と語る奥澤さん。

Play Movie [約4分]