産地・茨城県 結城市、常総市
結城紬


絹川が生んだ、美しい着物

茨城県の県西部に位置する結城の地。市内には蔵造りの街並みが残り、澄み渡る空と筑波山、田畑広がる光景を見ていると、どこか懐かしくゆったりとした時間が感じられます。
結城紬の産地は関東平野を流れる鬼怒川沿いであったこともあり、肥沃な土地を生かした養蚕業が盛んでした。「鬼怒川」は、江戸時代のはじめには「絹川」「衣川」の字が当てられていましたが、幾度かの氾濫により、現在の「鬼怒川」と呼ばれるようになりました。「織物も染めも、水がないとできない」といわれるように、結城紬が生まれた背景にこの土地の風土や歴史が深く関係していたことがわかります。
いくつもの工程を経て作られる結城紬には、各工程を担う職人の想いが込められています。古くからある伝統技法を残しながらも、時代に合わせて進化し続ける結城紬は、今日まで多くの人を魅了し続けているのです。

結城紬の原点、真綿に魅せられて

真綿とは、繭をお湯で煮て柔らかくし、引き伸ばして綿状にしたもののこと。ふわりと軽くて柔らかく、たくさんの空気を含むため、保温性に優れています。昔の人々はこの真綿を首に巻いたり半纏に入れたりと、寒さから身を守る道具として使用していました。「こんなに軽くて暖かい真綿から、自分たちの着物を作ったらどんなに良いだろうか」という先人たちの想いから、結城紬は生まれました。「紬」という名は「糸を紡ぐ」という動作から来ています。

美しく繊細な柄を生む、絣づくりの技法

結城紬の柄を構成する絣は、設計図案をもとに大きく3つの方法で作られています。
「絣くくり」とは、絣にする部分を木綿の糸などでくくり、防染する方法。糸全体を染めた後に木綿糸を外すと、くくってある部分だけ染まらずに白い絣ができあがるのです。他に、絣となる部分に直接染料を摺り込んでいく方法を「直接染色法」、一反分の糸を台に延べ、型紙を置いた上から染料を流して染めていく方法を「型紙手捺染染色法」といいます。
こうして作られた細かな絣を合わせていくことで、反物に繊細な柄が浮かび上がるのです。

結城紬の里帰り、湯通し

「湯通し」とは読んで字のごとく、織りの際に糸を補強するためにつけられたうどん粉糊を落とすため、反物をお湯にくぐらせる工程です。作業は一反ずつ手仕事。糊の量は機屋ごとに異なり、季節によっても違うため、職人の手の感覚を頼りに落とし加減を変え、結城紬本来の姿である真綿により近い風合いに戻していきます。
湯通しの後は天日干しをし、テンターという機械で巾の調整をした後に、反物の仕上がりを検査する「検反」が行われます。「結城紬の里帰り」ともいわれる産地での湯通しにより、着物を着るときには最高の状態を味わえるのです。

着るほどに、身体に馴染んでいく着物

結城紬には、着ていることを忘れてしまうような着心地の良さがあります。真綿糸ゆえに毛羽立ちが生まれますが、それが人の身体にフィットし、毛羽の摩擦により着崩れしにくくなるのです。また、弾力性に優れ、一晩干しておくだけでしわが伸びるので、旅行着としても適しています。シックな雰囲気ゆえどんなシーンにも合わせやすく、周囲の環境に溶け込みながらも、控えめに主張する奥ゆかしさがあります。

機械文明の中で生まれた製品は、使うほどに古くなっていきますが、日本古来の手作りの製品は、使うことで人に馴染み、良さがにじみ出てきます。着物を着ることは、河のせせらぎを聴き、山で深呼吸をすることにも似ています。それは、なければ生きていけない類のものではありませんが、心が安らぎ、気持ちが穏やかになるためにはなくてはならないものです。機能性だけでは図れない、人間本来の姿に寄り添うかたち。それが、結城紬なのです。

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