「西表島の夜明け」ミンサーコンクール−1

2017年4月、西表島で11年ぶりに「ミンサー作品展~織りなす八重山の伝統美」が開かれました。 島の植物を染料とし、図案から染め、織りまですべてひとりで手掛ける、つくり手の愛情がこもったミンサー帯。それが今、都会の女性たちに人気です。 本文は、主催者である竹富町織物事業協同組合理事長 島仲由美子氏と共催のきものの森財団理事長 矢嶋孝敏の対談と、「ミンサー作品コンクール」の授賞式の様子を逐語訳したものです。
 
西表島の夜明け「ミンサーコンクール」


矢嶋:今回ここ西表島の離島振興総合センターで、実に11年ぶりに品評会を開くことになりました。私がミンサーと出会った想い出の場所でもあります。その時と比べると、最大の変化は色がとてもカラフルになったこと、そしてセンスが都会向けに変わってきたな、という印象を受けます。それについて、ずっと指導されてきた島仲理事長はどうお考えですか。

島仲:あの頃は紅露(くーる)で染めた茶色の帯が本当に多かったですよね。紅露は八重山にしかない、この土地の最高の色だと自分たちは思っていたので、それを八重山の色として活かしていきたかったんです。

矢嶋:それはよくわかります。紅露の茶色は種取祭をはじめ折々の神事に使われますし、八重山文化の象徴的な色だったのもあるんでしょうね。

島仲:それで「やっぱり紅露だ」と一生懸命に色々やっていたんですが、ある時京都の産業会館での販売会に行きまして。そこで残っている私たちの帯を見たら本当に茶色の山で、私は言葉が出ませんでした。

矢嶋:それは品評会の後ですよね? 私どもが初めてミンサーを扱い1年間販売して、その時に残ったのが、当時理事長がご覧になったその色だったんですよ。

島仲:それから私たちもいろんな色を出そうと頑張ってきたんですけれど、やっぱり自分たちだけでは限界があって、今のような色は出せなかったんです。

矢嶋:沖縄産地は織手さんが染色もやるし色も考えるので各々の独自性が出ますが、色をつくるエキスパートではなかったですからね。

島仲:その通りです。そこで真南風工房長の花城さんが西表に来てくださって、私たちに染めを教えてくれました。それで私たち組合員もまたミンサーづくりが凄く楽しくなって。

矢嶋:それはいつ頃ですか。

島仲:花城さんにいらしていただいたのは去年の春ですね。その前からも色々と見せてもらってはいたんですが、やはり去年は本当に目から鱗という感じで。驚きながらも楽しみが増えて、染色も織りも楽しい!という気持ちに変わってきたんです。

矢嶋:それは花城工房長の指導で、皆さん自身が染めたということですか。

島仲:そうですね。今は自分たちで復習しながら、花城さんの教えを守って一生懸命頑張っているところです。以前から「都会の若い子たちに合うような」モノをつくりたいとは思っていたんですけれど、なかなか自分たちだけではできなかった。それが現在、会長に「西表島の夜明けだ」と表現いただいたように、色数が増え都会の若い子たちに向けた色に変わってきたと喜んでいただけて、私たちも大変嬉しく思っています。

矢嶋:色という武器の幅が広がると、表現できる世界も今までより広がりますよね。色数の増加が引き金となって、ただ色数をたくさん使うだけではなく、経絣だけだったのを緯絣にするとか、すかしを入れるとか、柄や絣の出し方も以前と比べて飛躍的に幅ができたと思うのですが、いかがでしょうか。

西表島のミンサー織りの説明をする島仲さん

島仲:今までと違ってこれだけの色数が使えるので、いろんなことに挑戦してみよう、何かひと工夫しようという気持ちを皆が持ち始めたんですよね。竹富の組合は西部地区・東部地区・竹富と3地区ありますが、それぞれにミンサーの特徴が異なります。

矢嶋:竹富では島仲やよいさんが経絣と緯絣に挑戦されて、技術賞を受賞されましたよね。東部と西部の違いはどういうものでしょうか。

島仲:西部は古典派と言ったらいいんでしょうか、やっぱり伝統を崩したくない、藍にこだわりたい、という風潮があります。絣の間隔や大きさにしてもあまり崩したがりません。一方東部は絣のサイズを大小交えたり、これだけバラエティに富んだ色が出てきたので、今まで藍にこだわっていた絣の色を黄色やオレンジにしてみようという意欲が凄く出てきたんです。

矢嶋:西部の藍へのこだわりは、辻口由紀子さん(最優秀作品賞)や上森佐和子さん(優秀作品賞)の作品にも表れていますよね。どちらかといえば、元は西部の方が頑張っていた印象があるじゃないですか。横浜や京都といった都会出身の西部の方が元々持っているセンスがあって、それが白場をうまく活かし、すっきりした藍染の絣をつくっていました。それに対して東部は、どういう風にしていいかわからなかった感じがするんですね。結果として西部に比べたら一周遅れではあったけれども、これだけ増えた色数を素直に使い、だからこそ自由にいろんなことができたのではないか。それを象徴するのが、私が「西表島の夜明け」と名付けた早田照美さん(準優秀作品賞)のレインボーの帯でしょう。 それと西部には、私が11年前から知っている方が主力で多い。対して東部は新しい人が増えてきたように思うのですが。

島仲:そうですね。講習によりまた3名の織子が増えました。あまり伝統にとらわれずに、講習で新しく学んだ色染めを素直に出せた感じはします。

矢嶋:私も驚いたんですが、表彰者の中にまだ織り始めて1年という方が何人かいらっしゃったでしょう。それは良い意味で4寸帯の特徴だと思うんですよ。きものや8寸帯をつくるのはなかなか大変ですが、4寸帯はそれらに比べれば手軽にできる。今回の品評会でその良さが特に表れていたのが東部じゃないかなと。

島仲:それと東部の皆さんと話していると、染めも織りも楽しくて楽しくてしょうがないという感じで。ミンサー織りをとても楽しんでやっている傾向がありますね。

矢嶋:モノづくりをする人が楽しい、というのはとても大事なことです。確かにモノづくりを生活の糧にしていくという必要性もありますが、それだけでやっていくと売れるものをリピートしてつくっていくという、何か効率的な仕事になってしまう。けれども今回の品評会では、おそらく東部の方々は「これが売れる」というよりも、「こういうこともできるんだ!」という意思で、素直に創造の翼を広げていろんなモノをつくってきてくれた。それが今理事長の仰った「楽しい」という言葉に繋がったんじゃないかなと思います。 伝統的な技術や柄付けに都会のセンスを入れた西部と、新しい色を駆使して自由な発想をする東部と、ベテランらしい技術力を活かした竹富、その3つのミンサー産地それぞれの特徴がとてもはっきりしていて、それがまた幅や刺激を生んでいる気がしますよね。そこに石垣、白保の持っている力が加わると、同じミンサーの中で何種類もの孫産地ができてくる。しかもそれぞれが刺激を受けながら個性的なモノづくりをしていく。それは西表島や竹富、石垣にとって、凄く大きなことだと思うんです。

島仲:今回の品評会がまた皆のやる気にも繋がりましたし、本当に感謝しています。これからも頑張らせてください。

矢嶋:今まで産地、特に手づくりの産地に、どういう形で向上意欲や健全な競争意欲を促すか、一生懸命考えてきました。というのも、それは一歩間違うと人のものを真似したり、売れるものだけつくればいいという商業主義に陥るからです。しかし先ほど理事長が仰ったように、染めるのが楽しい、織るのが楽しいという中で、とても素直な向上心や競争心が自然に生まれてきたことは、私にとっても本当に嬉しいですし、いい勉強になりました。 ところで展示会後の理事会では、皆さんの反応はどうでしたか。

島仲:とても良かったです。今年度も頑張っていこうということで、理事会でも話し合いをしました。

矢嶋:増産できそうですか。つくっていただければその分だけ一生懸命売りますから。

島仲:ありがとうございます。いろいろとお世話になりながらで、量的にも少ないですが、とにかく一生懸命頑張りますので宜しくお願いいたします。

矢嶋:日本の産地でもごく少なくなった手づくりの染色・手織りの帯を、お求めやすい価格で都会の若い人に渡していくというのは、おそらくもう竹富・石垣しかできませんし、産地の皆さんの力が必要です。これからも宜しくお願いします。(▷▷2ページへつづく)